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タマネギの成分と体を温めてくれる可能性

タマネギ(玉葱/玉ねぎ)とは

タマネギイメージ

名前の通りネギ科ネギ属に分類される食材、タマネギ。

「西洋のかつおぶし」と呼ばれることもあるように洋食では味のベースとして欠かせない食材とされていますし、和食でも煮物やお味噌汁などに使われています。日本でも国産野菜の収穫量トップ5に入るほどポピュラーな野菜でもあります。日持ちがきくこともあり、家庭の常備菜と言える食材の一つではないでしょうか。

日本に伝わったのは江戸時代と比較的最近ですが、世界的に見るとタマネギは非常に古くから人々に栽培されてきた作物。紀元前の古代エジプトではピラミッドの建設に関わる労働者にニンニクやタマネギが配給されたという話も知られていますね。これは当時からニンニクと共に強壮効果を持つ食材と考えられていたためなのだとか。強壮以外に魔除けや勇気を高めるなどの伝承もあったようですよ。

近年では強壮や魔除けというイメージこそありませんが、健康食材・抗酸化食品として注目されている存在。サプリメントの原料などにも用いられていますし、玉葱の皮を原料とした“タマネギ茶”なども販売されています。一時期はTVの健康番組などで取り上げられていたこともあり「血液サラサラ食材」というイメージを持たれている方も少なくないのではないでしょうか。

タマネギの成分の成分が冷え性の解消に繋がる理由

①代謝向上にも期待

タマネギには同属であるニンニクやネギと同じく硫黄化合物の硫化アリル(アリシン)が含まれています。アリシンは糖のエネルギー代謝に必要なビタミンB1と結合することで「アリチアミン(活性持続性型B1)」という物質に変わります。ビタミンB1はアリチアミンになることで単体の時よりも体への吸収率が良くなり、血中に留まっていられる時間も持続することが報告されています。

ビタミンB1は糖代謝に関わる補酵素として働くため、疲労回復を促してくれるビタミンとも呼ばれている存在。この働きからアリシンがビタミンB1の働きを高めることは代謝促進・体内での熱生産量の向上に繋がると考えられます。エネルギー産生時に生じた熱は血流に乗って体内を巡ることで体温を保持してくれますから、結果として基礎体温の向上や冷え性の改善に役立ってくれる可能性があるでしょう。

②血流を改善する

タマネギにはアリシン以外に硫化プロピルと呼ばれる硫黄化合物も含まれており、空気に触れて酸化すると“トリスルフィド”という成分に、また長時間加熱されることで“セパエン”という物質に変化します。トリスルフィドとセパエンはどちらも中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールの低下作用を持つ可能性が報告されており、生(硫化プロピル)のままよりも働きが強くなると考えられています。

加えてタマネギには抗酸化作用を持つケルセチンなどのポリフェノール類も含まれていますし、アリシンも強力な抗酸化作用や中性脂肪・悪玉コレステロールを低下させる 働きがあると言われています。こうした成分を含むことからタマネギは「血液サラサラ食材」として高い健康効果が期待されているんですね。高血圧や動脈硬化などの生活習慣病予防としても取り入れられています。

またアリシンは毛細血管を拡張することによる血行促進作用もあると考えられています。体が冷えてしまう原因としては主に血行不良と熱生成低下が、血行不良を起こす大きな要因として血液がドロドロ状態になっていること・血管が収縮していることが挙げられます。このためビタミンB1を助け代謝を促す・血流の滞りを予防する働きが期待できるタマネギは冷え性の軽減効果が期待されています。

その他、タマネギの成分に期待できる効果

疲労回復・風邪予防に

タマネギ他ネギ属の食材の代表成分とも言えるアリシン(硫化アリル)はビタミンB1と結合し、ビタミンB1の吸収率や持続力を高める働きがあります。このため糖代謝が活発化による疲労物質の代謝促進や体力・スタミナの増強などに繋がると考えられます。加えてビタミンB1にはブドウ糖からのエネルギー生産を手助けすることで脳神経機能を正常に保持する働きもありますから、肉体を酷使した場合だけではなく脳を使った場合の疲労回復や集中力低下などの軽減にも効果が期待できるでしょう。

そのほかアリシンには強い殺菌作用消化液の分泌を活発にして胃腸を強化する働きもあります。この殺菌作用から食あたり・風邪やインフルエンザなどの感染症予防にも役立つと考えられています。また胃腸機能を高めて他の食品の栄養吸収を高めることや、代謝向上・血行促進などの働きも、間接的にではありますが免疫力の保持・向上のサポートに繋がると考えられます。

便秘改善・肥満予防に

タマネギは野菜類の中で食物繊維を多く含む食材とは言い難いものの、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランス良く含んでいる・野菜類の中では比較的オリゴ糖含有量が多いという特徴があります。即効性のある食物繊維補給源や便秘対策としては期待できませんが、お腹の調子を整えるサポートとして役立ってくれでしょう。

またタマネギのポリフェノールであるケルセチンは腸内の脂肪と結びついて脂肪を固め排泄を促す働きも期待されています。このため腸のデトックス効果や余分なコレステロール排出促進などの働きも期待されており、糖代謝促進や血液循環を整える働きと合わせて肥満予防に繋がるのではないかとも考えられています。「酢玉ねぎダイエット」が提唱されブームとなったこともありましたね。

美肌・アンチエイジングに

タマネギポリフェノールの代表格として紹介されるケルセチンは、ポリフェノール類の中でもフラボノイド系に分類される成分であり「フラボノイドの中でも強い抗酸化活性を示す」と言われています。またタマネギのケルセチンは“ケルセチングルコシド”というグルコシドと結合した形で含まれており、非グルコシドに比べて吸収されやすいことが報告されています。このためタマネギはより効率よく抗酸化物質を補給できる=高い抗酸化効果が期待できる食材と考えられています。

抗酸化物質は身体の様々な細胞の酸化を防いで健康維持をサポートしてくれるだけではなく、肌などの細胞を健康に保つことでシワやタルミなど外見の老化を予防する働きも期待できます。またアリシンの働きによって糖代謝が活発化することで、余剰な糖がタンパク質と結合して起こる老化現象“糖化”の抑制にも繋がります。
ただしタマネギはビタミンB6こそ多めなものの、ビタミンEやCなどはあまり含まれていません。お肌を整える働きを期待する場合は緑黄色野菜と、糖代謝促進を期待する場合はビタミンB1の多い豚肉などと組み合わせて食べると良いでしょう。

タマネギ摂取のポイント

タマネギ

玉ねぎに含まれている硫化アリル(アリシン)や硫化プロピルなどの硫黄化合物は揮発性成分。また硫化アリルは加熱にも弱いので、料理時にはいきなり火にかけずに空気に触れさせる時間を作ると良いと言われています。

切ってから置いておく時間は15~20分程度が好ましいとされています。短時間ではアリシンが安定せず、長すぎると気化してしまう分が多くなるのだとか。


硫化プロピルの方は空気に触れさせたり加熱することでも激しい変化は無いとされていますが、たまねぎに含まれている硫黄化合物類は水溶性で、辛味を抜くために水に晒しすぎると溶けだして減少してしまいます。なのであまり長く水に晒さず、辛味が気になる時は酢を使うようにしたほうが確実なようです。

参考:玉葱(タマネギ)~歴史・栄養成分と期待される効果効能・食べ合わせなどを紹介~