冷えとり:鉄分>>

冷えとりに行き詰まるのは、鉄分不足(貧血)かも

鉄分とは

鉄分イメージ

私達が生きていく上で欠かせない必須ミネラルの一つに数えられる鉄分。不足すると貧血(鉄欠乏性貧血)の原因になることもよく知られており、特に女性の多くは必須ミネラルの中でも意識している方が多いのではないでしょうか。

鉄分には動物性鉄分と動物性鉄分があり様々な食材に含まれていますが、体内での吸収・利用率が極めて低いことが難点。鉄分量を意識した食事をしていても推奨量ギリギリくらいという説もあり、ミネラルの中でも1,2を争うほど不足しやすい存在とされています。


1日推奨摂取量
成人男性:7.0mg~7.5mg
成人女性(月経あり):10.5mg
成人女性(月経なし):6.0~6.5mg
 ※妊娠初期・授乳中+2.5mg、妊娠中~後期+15mg
1日耐容上限量
成人男性:50mg
成人女性:40mg
不足による症状
鉄欠乏性貧血。ヘモグロビンが正常値でも「隠れ貧血(フィリチン不足)」と呼ばれる貯蔵鉄の減少状態においても、肌荒れ・疲労感・情緒不安定・睡眠障害などが起こる可能性がある。
過剰摂取の症状
嘔吐、腹痛、下痢、眠気、痙攣発作など。通常の食事のみからの鉄分補給の場合は起こり得ないと言われています。

鉄分の代表的な働き

鉄分の必要性というと「貧血の予防・改善」が第一に挙げられます。鉄分の主な働きは赤血球を構成するヘモグロビンの成分 となり、血流によって全身に酸素を供給することです。また体内の鉄の0.3%はエネルギー代謝に関わる酵素の原料としてや、肝臓の解毒時などにも用いられています。

貧血と一口に言っても鉄欠乏性貧血・再生不良性貧血・悪性貧血・溶血性貧血など様々な種類や原因がありますが、日本の貧血患者の場合は全体の80~90%と大半を“鉄欠乏性貧血”が占めていると言われています。全ての種類の貧血に鉄分補給が良いというわけではないのですが、貧血=鉄分補給という印象が強いのは大半が鉄欠乏性貧血のためなのだとか。病院で診断されていない方も含めると、若い女性の場合は25%=4人に1人が貧血なのではという説もあります。

貧血を起こすとめまいや頭痛をはじめ、倦怠感・疲労感から不眠や情緒不安定などの精神的不調まで様々な症状が起こります。これはヘモグロビン量が減少して身体が酸素不足となり、正常な機能を保てなくなるためです。動悸・息切れがするのは心臓が酸素不足を補うために収縮回数を増やすためなのだとか。
このヘモグロビンとなって身体に酸素を運んでいる鉄分を機能鉄と言います。対してフェリチンというタンパク質内に蓄えられている貯蔵鉄というものもあり、食生活の偏り・女性の場合は月経などで機能鉄が不足した場合はこの貯蔵鉄から鉄分が補充されます。

通常の健康診断などで「貧血」と診断される場合はヘモグロビン値を元に診断されていますが、上記の流れで貯蔵鉄から鉄分が補われていますから第一に無くなるのは貯蔵鉄の方。このため最近は血清フェリチンの測定で基準値以下の状態=潜在性鉄欠乏症(隠れ貧血/フィリチン不足)として認知されるようになっています。貧血の症状として知られているものは貯蔵鉄不足時点から発生することが分かっており、倦怠感や疲れやすさなど女性の不定愁訴の原因の大半が潜在性鉄欠乏症ではないかとも考えられています。

鉄分と冷え性の関係

鉄分は血液の中で酸素を運ぶ役割を担う成分。
上で貧血の症状は“身体が酸素不足になり正常な機能が保てなくなるため”とご紹介しましたが、内臓や筋肉の機能が低下すると代謝も低下してしまいます。その結果として熱を十分に生み出せなくなりますし、中心部から遠く熱産生が正常でも冷えやすい手先・足先は言わずともがなですね。

冷え性の改善としては抗酸化物質やビタミンEなど血管拡張作用を持つ物質を摂取し、血液循環を良くすることがよく取り上げられます。しかし貧血の場合は血行を促すことよりも鉄分を補給してヘモグロビン量を回復させる方が先決と言えるでしょう。鉄分(ヘモグロビン)が不足している場合は血流が良くなっても酸素が行き届かない→代謝が上がらない→身体が温まりにくいという残念な結果になってしまう可能性が高いのです。

貧血の方が必ず冷え性になるという訳ではありませんが、貧血と血行不良・冷え性は密接な関わりがあります。自覚症状としても倦怠感やだるさ・風邪を引きやすくなる・肩こりなど筋肉の凝り・肌荒れなど共通のものが多いのも特徴で、冷え性の原因やタイプに貧血型冷え性という区分を作っていらっしゃるメディアも多いですね。
完璧な貧血までいかなくともフィリチン不足の可能性がある方は多いと言われていますから、食生活の偏りがある方・普段は平気でも生理前後に貧血っぽい症状が出る方は鉄分を意識してくてください。同じく不足すると貧血の原因となる亜鉛の補給も心がけるとより効果的でしょう。

鉄分補給におすすめの食材

鉄分は大きく植物性鉄分(非ヘム鉄)動物性鉄分(ヘム鉄)の二種類に分けることが出来ます。非ヘム鉄は体内への吸収率が低く約5%、対してヘム鉄の吸収率は約23%と言われていますから動物性食品を取り入れたほうが効率よく鉄分を補給出来ます。

鉄分含有量が多い動物性食材としてまず挙げられるのは「レバー」。100gあたりの鉄分含有量は豚レバー13.0g・牛レバー9.0gと、乾物や香辛料を除けば全食品中トップクラス。しかしレバーはかなり好き嫌いがありますし、頻繁にレバーを献立に組み込むというのもあまり現実的ではありません。

アサリイメージ

そこでオススメしたいのがシジミやアサリなどの貝類。レバーほど含有量が多いわけではありませんが、実はイワシなど丸ごと食べられるものを除いた魚類・牛や豚のモモやバラ肉などよりも鉄分含有量は豊富です。

植物性食品の場合…
毎日の鉄分補給に使いやすい存在として、鉄分含有量や吸収率こそ低いものの植物性食品も侮れません。鉄分含有量が多い存在としては緑黄色野菜・葉野菜が挙げられますが、より手軽な鉄分補給源としてはアマランサスやキヌアがオススメです。キヌアについては日本食品成分表の記載がないため曖昧な点もありますが、アマランサスは100gあたりの鉄分含有量が9.4mgと穀類・擬穀類の中でも圧倒的な鉄分含有量。一日分の鉄分を…とまではいなかくとも、お米に混ぜて主食にすると不足分のフォローに役立ってくれます。

ちなみに貧血に良いというイメージを持たれることの多い野菜である「ほうれん草」は、鉄分含有量こそ野菜の中では多いものの鉄分の吸収を阻害するシュウ酸が含まれています。茹でてアク抜きをすることでシュウ酸を抜くことか出来ますが、鉄分含有量や鉄分の吸収を助けるビタミンCも同時に減少してしまいます。葉野菜であれば小松菜・水菜などアク抜きの必要ないものを選んだほうが無難でしょう。

鉄鍋を使う方法も
少し前に日本食品標準成分表2015年版 (七訂)掲載の、ヒジキの鉄分含有量について一部で話題になった事を耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。ヒジキといえば鉄分の王様とも呼ばれるくらい鉄分豊富というイメージのある海藻でしたが、七訂では可食部100g当り“鉄釜製ひじきは鉄分58.2mg・ステンレス釜製は6.2mgとかなり少ないことが発表されました。流通しているヒジキのほとんどはステンレス製なので鉄分補給にならないのでは…という声もチラホラと(※日本ひじき協議会で研究中とのこと)。

ヒジキの問題はさておき、この発表から鉄製調理器具を使うと調理中に溶け出た鉄分を摂取できると考えられます。昔から「貧血なら鉄鍋で料理を作りなさい」と言われていたのも納得ですね。

鉄分と合わせて摂りたい栄養素

レモンイメージ

ビタミンC
ビタミンCは吸収されにくい非ヘム鉄を吸収しやすい状態(三価鉄→二価鉄)に変換するのを助ける働きがあるため、海藻や野菜・豆類などから鉄分補給をしたい場合はビタミンCと組み合わせると効果的です。ビタミンCを含む食材と食べ合わせたり、レモン汁をかけて食べるなどすると良いでしょう。


クエン酸
クエン酸にはミネラルを挟み込むことで体内に吸着させやすくする働き(キレート作用)があります。鉄分の吸収率アップにも役立ちますから、ドレッシングなどに取り入れてみると良いでしょう。

動物性(獣肉性)タンパク質

獣肉・魚肉・鶏肉などに含まれている動物性タンパク質は体内でのヘム鉄の利用性を高める働き・非ヘム鉄の変換を高める働きがあります。ヘム鉄の吸収率が高いのも、初めから動物性タンパクと結合して吸収されやすい形になっていることが大きいと言われています。タンパク質そのものも血液(赤血球)の原料になりますから、ベジタリアンなどでなければバランス良く取り入れるようにしてください。

ちなみに乳製品や卵など「肉」以外の動物性食品に含まれているタンパク質の場合は鉄分の吸収・利用率の向上は認められていないようです。