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生野菜で体は冷える? 生野菜摂取のメリットとデメリット

生野菜は冷えに良い・悪い両説あり

生野菜イメージ

冷え性の予防や軽減を心がけている方にとって扱いに困るのが“生野菜”の扱い。酵素系商品が好きな方やローフード派の方であれば「野菜本来の持つ酵素・栄養素を余すところなく摂取できる」方法として冷え改善にも生野菜の摂取が適していると主張していますし、これまでの定説や東洋医学的考え方(薬膳)であれば「身体を冷やすから避けるべき」とも言われます。

生野菜の摂取はどういった影響と恩恵があるのか、推奨派と否定派の主張から考えて見ようと思います。


生野菜は体を冷やす説

生野菜が体を冷やすとされている理由にはいくつかありますが、その中でも一番分かりやすい理由として元々の温度が低いという事が挙げられるでしょう。茹でたり蒸したりした野菜に比べるとサラダなどで食べる生野菜は低い温度ですし、どのご家庭にも冷蔵庫がある現代では食べる直前まで7℃以下に冷やされていることが多いというのが現状です。また常温を意識しても10~12℃くらいと言われていますし、水分量が多いという特徴もありますね。

夏場に冷えが悪化する要因としても考えられているように、冷たいものを取り過ぎると体を内側(内蔵)から冷やすことに繋がります。人体はホメオスターシス(恒常性)と呼ばれる環境を一時的に保つ働きがありますが、冷たいものを摂取したことでそこを温めるために血流・体温が奪われると考えられます。発熱量や血流が整っている方であれば問題ありませんが、元々体が冷えている=何らかの機能が低下している場合であれば負荷が大きくなると言えるでしょう。胃腸の温度が下がることで機能が低下し、栄養の分解・吸収が妨げられるという見解もあります。

そのほか生野菜は確かに野菜本来が持つ栄養素を壊すこと無く摂取できますが、それがデメリットになるという可能性指摘されています。例えばミネラルの一つであるカリウムは加熱調理することで減少する栄養素の一つ。カリウムは利尿を促す働きがあるとされることからむくみ改善に意識的に取り入れている方も少なくありませんが、尿の排出とともに熱を下げる働きもあると考えられています。こちらも一時的なものなので体に悪い冷えではないと言われていますが、冷たいものの摂取と同様に代謝機能や血液循環が悪いタイプの方にとっては負荷になる・体温を回復するまでに時間がかかる可能性があります。

生野菜は冷え改善に役立つ説

逆に生野菜が冷え改善にも良いと考える理由としては、熱に弱いビタミン類やファイトケミカル・酵素類などの成分を壊さずに摂取出来ることが第一に挙げられるでしょう。フィトケミカルにはポリフェノールやカロテノイド・サポニンなどのほか、アブラナ科野菜の抗酸化・血流改善物質とされるアリルイソチオシアネートなども含まれています。こうした成分は抗酸化作用によって血流の滞りを軽減したり、内臓機能・代謝機能の低下を予防してくれるので冷えの改善にも繋がると考えられます。

また体内で消化吸収や代謝などの様々な機能を助けてくれる“酵素”が摂れるという点にも重点が置かれています。種類にもよりますが酵素は60~70℃になると失活するとされているものが大半なので、酵素の補給としては生野菜が良いという方式ですね。ただし野菜に含まれている酵素の量や種類については『日本食品成分表』のような明確な基準がなく、どういった酵素が含まれているかも曖昧であるという微妙な点もあります。健康食品メーカーなどが「酵素」を売りに出している関係もあり、酵素と曖昧な表記で万能のような表記がなされているので出回っている情報の全てが信頼できるというわけではないと考えたほうが良いでしょう。

生野菜は冷え性軽減に良い派の見解では冷たいものの摂取・カリウムの利尿作用による体温低下などは一時的なものなので問題ないとし、一時的な体温低下よりも栄養補給による代謝向上・血流改善などの恩恵のほうが大きいと考えられています。

生野菜の摂取は自分の体と相談が大切

野菜イメージ

生野菜OK派・NG派それぞれの主な主張をご紹介しましたが、大まかには生野菜推奨派であれば栄養(酵素などを含む)の補給率を、生野菜は体を冷やす派では摂取時の体温低下という事にウェイトを置いていることがうかがえます。微妙に争点がズレていると言っても過言ではないのではないでしょうか。

単に生野菜が良い・悪いというのではなく、人によって適す適さないがあると考えた方が妥当かと思います。


まず生野菜を食べて恩恵を受けやすいのは胃腸機能が整っており、冷えが軽度である方と考えられます。これは生野菜をたくさん食べると胃腸に負担がかかると考えられること・一時的に低下した温度を元に戻すための負担が考えられるためです。逆から見ると元々低体温気味であったり、浄化機能が低下している方の場合は栄養素や酵素の恩恵よりも生野菜を食べる(消化する)負担のほうが大きくなる危険性があります。

また栄養をしっかりと摂るなら生野菜と考えがちですが、野菜を加熱した場合も減少・失活するものこそあれど栄養素がゼロになるわけではありません。熱を通し柔らかくなることで消化がしやすくなること、カサが減ることで量を沢山食べることが出来る・品目数を多くすることが出来るなどのメリットもあります。温かい状態で食べれば体を内側から冷やすリスクが減り冷えた部分を元に戻すための負担も軽減すると考えられますが、一部の酵素などは補給できなくなるので一長一短といえますね。

良し悪しではなくバランスが大切

スープ&サラダ

上記のことから、生野菜は冷え性の改善に悪いものではないが食べ方・摂取量に注意が必要であるという考え方が無難でしょう。

生野菜の方がダントツで補給効率が優れている成分もありますから、生野菜しか食べない・野菜は加熱したものだけを食べるなど極端な話ではなくスープにした野菜とサラダにした野菜を両方食べるなど、結局のところ生・温野菜をバランス良く食べるのが必要となります。


生野菜・温野菜どちらにもメリットとデメリットがあります。また両方に使える野菜もありますが、生での仕様に適した野菜・加熱に適した野菜というものもありますね。同じ大根でも大根おろし・大根サラダや。お味噌汁の具にするなど温冷両方のレシピに組み込むことで加熱時に失われる酵素などを補給することも出来ます。温野菜と生野菜の量は自分の体調に合わせて変えることで身体の保持や代謝向上に必要な成分を無理なく摂取できるでしょう。温かいものと組み合わせて食べることで体の内側を冷やすというデメリットを軽減することも出来ます。

午前中には当廃物の排出機能が活発に働くという説があるほか体温を上げようとする働きが強いとも言われていますからサラダを中心に食べ、眠りへと向かう夜には加熱した野菜を中心に食べるなど時間帯によってバランスを考えるのも良いでしょう。胡椒山椒などの薬味を加えると体を温めるだけではなく、消化機能のサポートも期待できますよ。